A river runs through it の原作「マクリーンの川」を読む

2022/09/16

釣り文学

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日本でも多くのファンを持つ映画「A river runs through it」。1930年代の古き良き時代のアメリカ北部の生活とスケールの大きな自然のもと、宗教的な厳格さをもって釣りをする兄弟と父のストーリーです。

その原作である「マクリーンの川」を恥ずかしながら初めて読みました。その感想です。

映画との違いは?

大きな違いと言えば、原作内では主人公である兄の進路(大学教授)についてはまったく書かれていません。映画のその部分は、おそらくご本人の経歴から切り取ったのでしょう。

映画では主人公が都会の大学に進学し長期休暇にモンタナに帰り、弟たちと時間を過ごすという描かれ方です。そして、内定の手紙が来て教授職に決まったシーンなどもありましたよね。そういうものは原作にはありません。

他はほぼ映画と同じかなと思います。弟ポールがシャイアン族の娘と付き合ったり、ギャンブルでトラブルを抱えていたり、本能的かつ天才的な釣り人であったことなど、完全に頭のなかに映画のワンシーンが浮かんでくるほど、あの映画は見事にこの原作を再現していると思います。

肩まで水につかって川を渡るシーンで、ハットの中にタバコとマッチを入れ濡れるのを防ぐシーンなんかは、この作品を象徴しているように感じます。時代と釣りのスタイルと、川の様子が見事に脳内に再生されますね。

時代背景と作者

この本の作者、ノーマン・マクリーンは1902年に、スコットランド系移民の家庭に生まれます。父は牧師で母と弟がいるという家族構成です。

10歳まで正規の教育を受けず、森林警備隊(おそらくボーイスカウト的なもの)で活動したり釣りをしたりと、理想的な環境で奔放に育ったようです。

名門であるダートマス大学を卒業したのち、シカゴ大学で英文科の教授職を得ます。43年間を勤め上げ退職したのちに、この作品を書き上げました。

この作品の執筆には約2年かかり、完成・出版時には74歳という、異例ともいえる遅い文壇デビューでした。

若くしてこの世を去った弟、そして、1930年代のモンタナ州の自然と厳格な父と家族と過ごした時間を、記録しておきたかったのでしょう。

人間的な魅力にあふれたポールという名の弟は、この作品によって二度目の生を受けたとみることもできるでしょう。この作品がなかったら、この生命力に満ちた若い男の生涯は、誰の目にもとまらなかったはず。

読みどころと感想

映画もそうですが特に大きな事件は起きません。

しいて出来事をあげるならば、義理の兄にあたる、なにかと鼻につくニールの帰郷のエピソード、そして物語終盤のポールが大物を釣り上げるシーンでしょうか。

ちょっと退屈に感じるひともいるかもしれません。私もそうでした。おそらく時代背景や、作者のおかれた境遇を肌感覚で理解できないと、本当の意味でこの作品を読み味わうことは難しいのかもしれません。

この作品の大切な要素として宗教と釣りというものがあります。まさに最初の一文にこうあります。

わたしたちの家族では、宗教とフライフィッシングのあいだに、はっきりとした境界線はなかった。

もちろん本来は宗教とさかな釣りはまったくべつのものなのですが、川とさかなが住むその環境との向き合い方を宗教的な信仰にまで高めていたのが、彼らの父であり、その父から川との向き合い方を教わり、二人はその点に関しては極めて忠実に教えを守り育ちます。

そして、この父は厳格さだけではなくユーモアも持ち合わせた人でした。

兄がよく釣れているとき、ポールはそこに石を投げこんで相手の釣りを妨害するシーンがります。そして物語の後半では、父がポールの釣り場に大きな石を投げこんでふざけるシーンも出てきます。

そのユーモアとちょっと短気な気質が弟のポールに引き継がれ、厳格で神経質な部分が兄である著者に引き継がれたようです。必ずしもはっきりと分けられるものではないとは思いますが。

まとめ:できれば原作を先に読みたい

この作品に関しては、ほとんどの人が映画の方を先に見ているのではないかと思います。

出版当時にアメリカに住んでいた、ほんの一部の本書のファンのみが、原作を先に読んだのでしょう。発刊直後からとても地味だけどちょっと特殊な本ということもあり、コンスタントに売れていたようです。

こういう本って意外と少ないです。そして、フライフィッシングがちょっと格上の釣りになった一因がこの本にあるような気がしています。

特に、餌つりに対する偏見も、ニールの存在によって強調されています。餌釣りは下衆の釣り、といったイメージが定着してしまいました。

映画を見てからこの本を読むと、ポールは完全にブラッドピットで再生されてしまいます。でも、あの生気あふれる衝動的な天才フライフィッシャーのイメージはまさにあんな感じだったので、そんなに違和感はありません。

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