衝撃的な事件が起きて、いままで触れられていなかった事柄が表面化するといったことはよくあることです。ただの「後知恵」と言ってしまえばそれまでなのですが、ことが起きてからでないと評価が難しいものも多い、というのがこの世の中なんでしょう。
海外のニュースサイトの安倍元首相暗殺の第一報についての記事を見てみましょう。
海外ニュースサイトはどう報じたのか?
BBC
Shinzo Abe death: Shock killing that could change Japan forever
おそらく日本在住の特派員の方が書かれているのでしょう。日本がいかに安全で銃による殺傷事件が極めて稀であるかが実体験とともに語られています。とても分かりやすいので、海外の人に読んでもらいたいと思えた記事です。
本文中にもありますが、2017年度に起きた銃による殺人の件数はわずか3件と、銃による犯罪がいかに珍しいかがデータとともに解説され、さらにその日本では極めて稀な殺害事件のターゲットとなったのが、過去の首相のなかでも異色で歴代総理のなかでも突出した人物であった安倍元首相であった。
きわめてまれな二つのことが同時に起きてしまった日本は、今日がターニングポイントになるかもしれないと記者は語っています。それは多くの国民が感じていて、私もただただびっくりというのが感想でした。
AP
Shinzo Abe, powerful former Japan PM, leaves divided legacy
BBCの記事同様に、日本は世界でもまれに見る安全な国で、だからなおのこと今回の事件は日本中にショックを与えたと解説をしています。
安倍元首相の政治信条、歴史観、その功罪を客観的かつ簡潔に説明したのち、今回の事件に触れています。
APの記事では安部元首相の右寄りの政策に焦点を当てて、その政治家としての素顔を掘り下げて解説をしています。第二次大戦の正当化と改憲、軍備の増強等の側面が強く描かれています。
He also helped Tokyo gain the right to host the 2020 Olympics by pledging that a disaster at the Fukushima nuclear plant was “under control” when it was not.
この一文が何とも言えず面白い。平気で公然と嘘をつく安倍さんをよく表している一文ですね。when it was not. って。
最後に彼ができなかったこと、例えば、ロシアとの平和条約の締結、9条の改憲、北朝鮮との関係改善など、派手な印象とは裏腹に途中で終わってしまっていることが多いことにも言及している。
固めの文章で、かなり日本国内の日本人である私が思う以上にバリバリの右寄りの政治家として描かれているのが、今回のAPの記事の特徴です。平民目線のBBCの記事とは対照的。
VOA
Shinzo Abe, Japan’s Longest-Serving PM, Assassinated
他の記事と違うところは、日本の地図で奈良の位置を示しているところでしょうか。確かに海外の人にとっては日本の地理はさっぱりわからないわけで、遊説中にどこで暗殺されたのか、それはとても大切なことかもしれません。時間と場所がわかると出来事がリアルに感じられます。
他の記事と同様に、日本での銃規制の厳しさと銃の入手がほぼ不可能なことにも触れています。アメリカをはじめとした他国とはそもそもセキュリティーに対する考え方が違うというのは、なかなか理解されないかもしれませんね。日本は本当に特殊な国です。
そしてこちらも、AP同様に安倍元首相の右寄りの政治家としてのスタンスが中心に書かれていますが、注目すべきは後半の部分。
これまで有権者との距離がかなり近く、著名な政治家とも至近距離で握手をしたり出来ていた日本の選挙運動が大きく変わる可能性について言及しています。
三浦瑠璃さんのコメントも紹介されていますが、彼女は、今後も有権者との距離が近い、日本の伝統的な選挙活動は変わらないのでは、と述べています。
まとめ:右の強調が強めだった海外メデイア
今回、現役の国会議員かつ元総理大臣が暗殺されるというかなり特殊な状況で、各国のメディアが安倍元首相の経歴と政治信条をまとめた記事をアップしたのですが、正直日本国内にいる私が感じていなかった彼のナショナリズムと右傾化した政治姿勢に驚きました。
もし安倍さんがこの先政治家を無事に引退し、余生を過ごして高齢で亡くなっていたのなら、ここまで彼のレガシーがまとめられ、それが現行の政治に影響するようなこともなかったと考えると、政治家としては最も幸福な死に方だったのではと感じます。
暗殺が良いとは考えませんが、もっとも人を動かすのはやはり「死」なんだな、と。そして「死に方」もとても重要な要素になります。死をもってメッセージを発する方法は事例にこと欠きませんが、安倍さんの生前のスタンスと暗殺というのは見事にマッチしていてまさにレガシーになった感があります。
でも、だからと言って急に感情的になり、献花をしたり葬儀会場の外に駆けつける人の気がしれませんが…。ナショナリストにとって最高の舞台は国のために死ぬことであり、それが事実でないことを証明するためにも、犯人の動機はきちんと解明すべきだと思います。
安倍さんは日本国のために殉職したわけではない。この事件は民主主義に対する挑戦でもない。ただ勘違いした一人の暴漢に襲われただけ。結社も信条も転覆計画もないのです。安倍さんの死にヒロイズムは存在しません。神格化されないことを願います。
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