ちょうどバイデン大統領が日本を含めたアジア各国を歴訪中に、アメリカ国内で銃の乱射事件が発生し注目を集めましたね。もはや日常茶飯事と化している(ように思われる)アメリカでの銃乱射事件について、少し調べてみました。
アメリカはこれ以上の銃乱射事件を防ぐことはできるのか?
最近の2つの銃乱射事件
5月の末にかけて、アメリカで銃乱射事件が相次ぎました。
バッファローのスーパーマーケットで人種差別主義者の18歳の少年が起こした事件、その10日後にユバルディの小学校でも銃乱射事件が発生して19人の児童と2人の教師が犠牲となり17人がけがをするという衝撃的な事件が発生しました。
この二つの事件だけでも、日本に住んでいる私にとっては恐ろしく感じる出来事であり、ショックを受けていたのですが、英文記事を読んでいてさらに恐ろしい事実を知ってしまいました。
2つの事件の間に15の乱射事件
元ネタはこちらの記事になります。
Texas Gunman Locked Classroom, Shot Students, Teachers
ユバルディとバッファローでの銃乱射事件、その間10日間でほかにアメリカ国内で15の乱射事件が発生したという内容が書かれています。
いくつかの非営利団体が銃による暴力をカウントしていて、その一つがリストを作っているのでご紹介いたします。
死傷者数と事件の詳細、ニュースソースが掲載されていますが、最初見たときには正直驚きました。毎日のようにアメリカ国内で銃による死傷者がでているというこの事実。
遠く日本まで報道されるのはそれらの中で極めて悲惨なものだけで、単純に死者や負傷者が少ない事件はあまり報道されません。
これが銃社会アメリカの現状なんですね。
「銃乱射事件」明確な定義は存在しない
先ほどの mass shootings in 2022 のリストにも使われている言葉である "mass shooting" という言葉ですが、実は明確な定義はありません。アメリカ政府も定義付けをしていないので、集計団体によってこの「銃乱射事件」の発生件数は変わります。
こちらのアルジャジーラの記事内の図がわかりやすかったです。
Infographic: How many mass shootings took place in US in 2022?
2021年にアメリカ国内で発生した銃乱射事件を、各団体がどのような条件でカウントしたのか、わかりやすく図で示されています。
死者の数、負傷者の数、起きた場所など各団体によって集計の基準が違います。
公共の場での無差別銃乱射事件で3or4人以上が死亡したケースのみを mass shooting であるとしている団体が Mother Jones と The Violence Project。
場所を問わず銃により4人以上が死傷したケースを mass shooting と定義しているのが Gun Violence Archive と Mass Shooting Tracker になります。
その集計する団体によって発生件数に大きな差があり、6件と818件、大きな開きがあります。
銃乱射で死亡する確率は低いが…
多いほうの数字に注目すると、アメリカ国内で2021年に818件の銃乱射事件が発生し、920人が死亡、3141人が負傷しています。
この数字は自動車事故による死傷者数よりもはるかに少ない数字です。2021年度、アメリカ国内で交通事故で亡くなった人は42915人でした。(この数字にもびっくり!)
アメリカ国内に住んでいて銃乱射の被害者になる可能性はとても低いと言えるのですが、でも、ほかの死因に比べて気持ち的に大きな違いがありますよね。
それは、近所の人や社会への不信感を増大させるということ。それがさらなる犯罪と銃の所有の増加を助長しかねません。
銃犯罪を減らすことはできるのか?
こちらもアルジャジーラの音声記事になります。専門家へのインタビューです。この中でいくつか原因と対策が語られています。
Can the US end mass shootings?
まず原因を取り除く有効的な手段として、精神疾患への対処があげられます。銃乱射事件を起こした人の多くが、幼少期のトラウマなど何かしらの心の病を抱えていた状態であったことがわかっていて、それらをカウンセリングなどで事前に治療しましょうという考え方。
そしてより具体的ですぐにできる対策として、物理的に銃を遠ざけるという方法もあります。青少年による銃の乱射事件を防ぐには、大人が銃を今まで以上に厳重に保管すること。これだけでも防げるケースが多くあると専門家は指摘しています。
現状、銃の所有そのものを違法にしたり、販売を中止したりといった根本的な対策は、みなさんご存じのようにNRAなどの圧力団体と政治が結びついていて不可能です。なので、場当たり的な対処しかできないようです。
そんな中、先ほど挙げたVOAの記事に書かれている、「先日提出された法案」はとても効果的なのではないかと私は感じています。
The proposed laws would require background checks and longer waiting periods for gun purchases.
後半の「銃を購入する際にはより長い待期期間を必要とする」という部分です。日本でも無差別殺傷事件、また家庭内や痴話喧嘩で発生する殺傷事件に使われる刃物は、数日以内にホームセンターなどで買われたものであるケースが多いです。
衝動的に人を殺したくなった時にすぐ手に入る武器があること、その現状を変えることができれば事件の数は大幅に減るでしょう。
武器を買ってその場ですぐに持ち帰ることができないようにするだけで、悲惨な事件は減るのではないでしょうか。
そもそも、計画的に数か月前から準備をして銃乱射事件を起こす犯人は一握りで、特に学校での若者による銃乱射事件の多くは衝動的なものがほとんどみたいです。
世の中には一定数の衝動的な人々が存在します。彼らの怒りや衝動をそのまま銃乱射という行動に昇華できる環境を変えることができたら、このような凄惨な事件は減るのかもしれません。
だってアメリカではコストコで銃が買えちゃうんですよ。日本でもそれが可能になったら、アメリカ以上に銃乱射事件が発生するかもしれませんよね。
まとめ:自由を追求した先にあるものは
私はアメリカに行ったことがないくせに、なんだかアメリカという国に興味があります。ちなみに、行ってみたいという気もないのですが…
それは、世界が今までに試したことがない、人々の自由と権利を土台とした社会を作ろうと歩んできたところにあります。(あくまで表面的にですが。)
どんな人種の、どんなバックグラウンドの人でも等しく生きていけることができる社会、それを大前提として、建前として掲げていますが、格差は広がる一方で、加えて今回お話したような犯罪も増えています。
自由と革新が良しとされる社会は今後どのように変化していくのでしょうか。人間も欲深い動物です。自由に競争させると、弱者と強者が生まれます。弱者と強者が同じ社会で生活していると当然のようにゆがみが出てきます。
ゆがみは銃乱射のような事件で爆発し表面化します。
日本のようなとても変化が遅く急激な変化が起きない国に住んでいると、そんなゆがみを感じることもあまりありません。でも日本も近い将来、苛烈で後戻りができない競争に巻き込まれていくのでしょう。
自分が生きていくためには、勝者になる必要があり、敗者になってしまった場合はじっと歯を食いしばって死ぬまで生きていくしかないのです。その時、手元に銃があるのかないのか…その違いでしかないのでしょう。
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