【お金と職業】あなたが自伝を書くときに気を付けてほしいこと!

2022/05/06

哲学

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図書館で偶然見つけた本「プラネットウォーカー」ジョン・フランシス著、を読んで感じた違和感についてです。

この本だけに言えることではなく、自伝、アドベンチャー系、自己啓発系の本全般に当てはまる、その本を決定的につまらなくする要素に気がついてしまった、そんな記事になります。

お金と仕事に言及していないと、没頭できない

まずは結論です。今回ご紹介する「プラネットウォーカー」は主人公の金銭事情、仕事事情が一切書かれていないことにめちゃくちゃ違和感がありました。

どこをめくってもきれいごとばかり書かれている印象でリアルさが伝わってこないんです。

今まで読んできた自伝、アドベンチャー系、自己啓発系の本も、なんか共感できないなと感じたものは、すべてこれに当てはまっています。

読者の共感を得るためには、正直に金銭事情と仕事のことを書くべきみたいです。

「プラネットウォーカー」動機と行動はおもしろい


まずは、簡単にこの本の要約をしてみましょう。主人公のジョンはアメリカ西海岸に住む20代の黒人男性です。1980年代、多くのタンカーがアメリカの沿岸で座礁などの事故を起こし、油が海洋を汚染し多くの野生動物が命を落としたことを契機に、車に乗るのをやめようと決意します。

ある程度お金がたまって余裕ができてから車無しの生活にしようと考えていたのですが、ごく親しい友人の死をきっかけに、思いついたことは今すぐ行動に移そうと決心をして、徒歩での生活に切り替えました。

友人に会いに行ったり、ライブを見に行ったり、キャンプに行ったり、すべての移動は徒歩になりました。数100キロの距離も1日30キロのペースで歩き続けて目的地に到達してしまいます。

その道中で出会う人々や道端の自然をじっくり観察して、ジョンは車に乗っていた時とは違う景色をたくさん目にして学んでいきます。

当然彼のしていることはいわゆる「奇行」に映るわけで、道行く人にその理由を聞かれ、環境の話になると時に口論になることもありました。間接的ではありますが、車に乗っている人にたいして「あなたは間違っている」と言っているのと同じですからね。

口論を避けるために、ついには話すこともやめてしまいます。車に乗らず、話すこともやめた彼は、ひたすら各地を旅して環境についてもっと学ぼうと努力をし、その途中で大学に入り直し物理学と数学を学びなおしたり、山奥の鉱山で5年間生活してみたりとたくさんの貴重な体験をしていくわけです。

さて、こんな感じでとても興味深い内容の「プラネットウォーカー」なんですが、その時その時、彼がどのように生計を立てていたのか、が全く語られていないのです。読者が一番知りたいことが書かれていません。

だから、どんなに遠くまで歩いたとか、大学で学びなおしたとか言われても、いつも頭の片隅に「お金はどのように工面したんだろう?」という疑問が付きまといます。

べつにもともと資産家であったとか、パートナーから援助されていたとか、そんなことでもいいんだけど、収入と仕事は明らかにしてほしい。

こと環境問題、貧困問題などに取り組む人のバックグラウンドはとても重要です。なぜなら、しょせん金持ちの道楽なんじゃない?と思われがちだから、なおさらそこらへんは明らかにしておいたほうが良い。

もし、毎日の生活にも困窮している状況で、本当に環境を守るため、啓蒙活動のために車に乗ることをやめて、無言を貫いたのであればそれはスゴイことだし、もし仮に、もともと裕福な人であったとしても、その動機がきちんと語られていれば共感はできるはずです。

名作には必ずリアルがある


話をストーリーにいったん戻します。そんな徒歩旅行の途中、彼の友人の一人が「ウォールデン」を読んだほうが良い、ということを主人公に言うシーンがあります。これは暗に、主人公の今回の行動がソローのものとかぶっているということを、敢えて読者に向けて語らせたように私には感じました。

「ウォールデン」の著者ソローはもともと賢い人でした。親も資産家でした。ハーバード大学を卒業した秀才だし、我々凡人とは何もかも違う境遇だったんだけど、多くの読者の心をつかんで離さない著作を残しています。

それは彼が、自然描写や詞的な表現などのキレイごとだけではなくて、きわめてリアルな数字の話をしていたからだと思います。最低限どれくらい稼げば自由な時間が手に入るのか、彼は測量や土木工事などの日雇いの仕事を最低限だけして、あとは徹底的な節制によって自由な時間を手にしました。

もう一つ、読者の心に響く自伝の定番として、植村直己の「青春を山にかけて」を挙げたいと思います。私が紹介するまでもなく超名作なんですが、やっぱりこの作品もお金のことはきちんと書いています。

各地でアルバイトをして次の旅の準備をしたシーンも語られているし、その中で彼の人柄にほれ込んで援助をしてくれた人もいる。きちんと偉業達成のバックグラウンドが書かれています。

むしろその部分、偉業達成のための下地作りの段階が「青春を山にかけて」の面白いところと言えます。彼が童貞を捨てたアフリカの夜に、多くの読者は共感と愛着をかんじたはずです。

まとめ:説得力はリアルなお金の話が生み出す


残念ながら今回ご紹介した「プラネットウォーカー」の著者は、お金と仕事の話は一切していません。語るのが難しい事柄だし、なるべく秘密にしておきたいのは理解できるんだけど、もし自分の行動で世界を変えたいと思っているのなら、そこは明らかにしてもよいのではないでしょうか。

大学で講演してほしいと頼まれて、何週間もかけて歩いてその大学に向かったとき、道中の経費、滞在費はどうしたのだろうか。貯金を切り崩したのか、誰かが定期的に送金していたのか、本当にバンジョーを弾いて得たチップだけで生活していたのか、なにも書かれていない。

そんなんじゃ共感は得られないよなぁ。最初のコンセプトがとても面白くてドキドキしながら読み進めたからこそ、そのギャップでめちゃくちゃがっかりさせられたので、こんな記事を書くに至りました。

なのでこの本、あまりお勧めできません。興味があれば残念な例として読んでみてください。テーマは最高におもしろいんだけどなぁ。

ということで、もし何か自分のストーリーに説得力を持たせたいときは、経済状況を嘘偽りなく明らかにしておくことをお勧めします。別にもともと恵まれていたからといって、誰かに責められることもないのだから。

まぁ、そりゃ貧乏なほうが共感は得られるでしょうが…

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