【英国紳士の無人島】ロビンソンクルーソーの規律と宗教

2021/11/14

哲学

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サバイバルものの名作「ロビンソン漂流記」の読書感想です。

いち文明人であった主人公は未開の地でも文明人であり続けました。

そして、孤独な生活の中で宗教にも目覚めていきます。

生きることとは?」といった人類共通のテーマを扱っているのが本書です。


ロビンソン漂流記ってどんな本?


・著者:デフォー 吉田健一訳

・初版年月日:1951/6/4 (新潮文庫版)

・ページ数:362ページ

・ジャンル:小説


本書「ロビンソン漂流記」の概要

中流家庭に育ち、その中流という身分がいかに安定して恵まれているかを教え諭す父のもとで主人公は育ちます。でも、船旅にあこがれる主人公は安定した生活を捨てて両親の許可を得ないまま航海へと旅立ちます。嵐に襲われ時なんかは、もう二度と船になんか乗るものかと固く誓うのですが、そんな気持ちもすぐに忘れてしまい、生来の放浪癖も手伝ってまたすぐに新しい冒険へと旅立ちます。一時はブラジルに渡り農園経営を成功させますが、ひょんなことから再び航海へと旅立ちます。そしてその航海中に嵐に見舞われ、一人無人島に漂着しそこから彼の無人島での孤独な生活が始まります。
その期間はなんと28年2か月と19日に及びました。長期間の孤独な生活で彼に起こった変化がこの本のメインテーマです。


こんな人におすすめです


・小説、実話を問わず冒険ものが好きな人

・人間の性質、本質を探究したい人

・無人島での生活を体感してみたい人

・近世ヨーロッパの研究をしている人


印象的なシーンとフレーズ

 

我々は現在とは別な状態に置かれなければ、我々の現状が本当はどんなものであるかを知ることができないのであり、我々が持っているものを失わなければ、その真価が解らないのである。「ロビンソン漂流記」新潮文庫 p195

無人島の外周を手作りの船で探検しているときに、潮流で沖に流されそうになります。こんな無人島だけど生活拠点として整えたものを失う危険にさらされて初めてそのありがたさを快適さを彼は見出だします。



危険に対する懸念は、危険そのものに直面した場合よりも遥かに大きな恐怖で我々を満たすものであって、我々が心配していることよりもその心配のほうが、我々にとっては大きな負担となるのである。「ロビンソン漂流記」新潮文庫 p221

誰もいないと思っていた無人島の砂浜で、明らかに自分のものとは違う足跡を見つけて以来、彼は急に臆病になり拠点に引きこもるようになります。一度そのような見えない恐怖の存在を知ってしまうと以前の生活に戻ることはできません。



しかしそういうことをするのが若いものの常であり、またその愚を悟るのは年取ってから、あるいは辛い経験に教えられてからであるのが普通である。「ロビンソン漂流記」新潮文庫 p270

父の忠告を聞かずに家を飛び出したことや、経営が順調だったブラジルの農園をその時の一時の衝動で手放したことなどを、彼は折に触れて後悔します。かといって、後悔ばかりではなく運命に翻弄される自分も大切にしているところがこの主人公の魅力です。


読書感想文


無人島に漂着した当初、彼は自分の運命を呪います。なぜ自分だけがこんな境遇に置かれなくてはいけないのかと、絶望し一人涙を流すこともありました。

本書91ページに、良いこと、悪いことを箇条書きにして思考を整理する場面があるのですが、そこから一説をご紹介します。

・悪いこと 
私には、私と口を利いたり、私を慰めてくれたりする仲間が一人もいない。

・良いこと
しかし神は船を海岸に非常に近く寄せて下さった。そのために私は多くの必要品を手に入れることができて、それで足りない時はそれを用いて不足を補い、一生暮らすのに困らない。

今置かれている境遇の中で、救いとなる点に光を当てて希望を見失わないように、クルーソーは努力します。そして、物事の良い点と悪い点の中に、その意味を考えるようになっていき、それを与えてくれた存在、すなわち神の存在の大きさに次第に気がついていきます。

若いころは全くと言っていいほど宗教に関心のなかったクルーソーが、少しずつ誰に導かれているわけでもないのに一人で信仰生活に入っていく様子が、なんとも滑稽で面白く、この点が本書の最大の見どころだと思います。


そしてもう一つの「ロビンソン漂流記」の見どころは、彼のマメさです。

冒険心や放浪癖はとても強いのですが、彼は文明人、経済人として極めてマメで財産の管理に関してはとても優秀と言えます。無人島生活の前にも適宜書簡のやり取りや手続きをきっちり済ませ、計画的に農場の経営を行いましたし、一人っきりの無人島生活においても経済人であり続けました。

脱出後にも周りの人への感謝を忘れず誠実に対応をして、かつ自分の権利を主張することも忘れずに財産をしっかり守って周りの人へ分配することを忘れませんでした。

英国紳士は未開の地でも英国紳士であったわけです。

後の植民地支配を可能にした要素がここにあるような気がしてなりません。

ちなみに、この小説が書かれたのは1719年です。

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