プラトン哲学はただの理想主義にすぎないのか?

今回はプラトンのイデアについて解説していきます。現代社会が抱えるジレンマへの回答がそこにはあるかもしれません。わかりやすくするために若干まげて書いていますので、詳しく知りたい人はきちんとした本を読んで学習を深めてください。

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イデア界で人生のイデアを手にしたい!

人は誰でも理想の状態というものを思い浮かべながら生活をしていると思います。

今つとめている会社がこんな感じだったらなぁとか、家庭がこんな風だったら最高だなぁとか、そんな理想があるから現実とのギャップに苦しみストレスを感じ時には怒ったりもする。

その理想像のことをイデアと呼んでみましょうか。そして、そんなイデアばかりが存在する楽園があるみたいですよーそれがイデア界です。

イデア界には理想の会社が存在し、理想の街並みを悠々と歩き帰路につくと、理想の妻が理想の子供たちとあなたの帰りを待っていて理想の食事を食べて理想の一日を終えるのです。

中には今の状態が理想に近いという人もいるでしょう。でもそれは続きませんよね、どこかで必ずあなたの個人的な理想は恐ろしい現実によって簡単に崩れていきます。どんな時にでも常にイデアを追い求めてがんばれる情熱(エロス)がなければいけないとプラトンは考え、自分自身がまずは自分のイデアたるべし!と考えました。

それが善のイデアだと私は解釈していて、そんなに間違っていないとは思います。

人間にもイデアが存在し、まぁ要するに理想的な人間がいて、そういうスーパーマンが国を治めれば国は繁栄し平和になるというのがプラトン流の国家論でした。だけど現実はいうに及びません。現実の世界をイデア界に近づける努力はしたいものですが。

VR空間はイデア界なのか?

イデアは理想の形だという話はさきほどしましたね。目に見えるもの、目に見えないもの、すべてには理想の形というものが存在し、そんな理想の形が集まったものがイデア界である。

じゃあゲームの世界やVR空間はイデア界なのでしょうか?

ゲームの方向性もあるでしょうが(ここではゾンビゲームではなくのんびり農園ライフ系のゲームだと仮定すると)制作する人が理想とする世界がVR空間に出来上がっているということは間違いないでしょう。美しい街並み、予定調和な人々、そこはとても居心地が良い場所のはずです。

ですが、プレイヤーがログインし、プレイヤーの分身である生身の人間がイデア界を闊歩するようになると、あっという間に無秩序な世界に変化していきます。イデア界なんて人間の弱さによってあっという間に荒れ果ててしまうということは、我々は経験上知っています。

ということで、イデアとイデア界は現実にはあり得ないし、もしそんな世界があったとしても、生身の人間は簡単にそれらを壊してしまいます。

でも、イデアがあるからこそ、VRを創り出すことができるのです。

その点でイデアとかイデア界という考え方は面白い思考法だと言えますね。

今後VRの技術はさらに進化していくでしょう。まさにイデア界を作り出すことができ、人間の脳もそれにつながれイデアとしてイデア界の住人になったときどんなことが起こるのでしょうか? 少し怖いですが体験したいという気持ちもあります。

イデア界の劣化コピーである現実

プラトンは強くなれと言いました。理性で自分をコントロールし自分のイデアに向けて力強く進むのだ!と。おいおい。そりゃ誰だって強くなりたいし、常に理性的な判断をしたいですよ。

現実の私たちはこんな体たらくです。何もかもうまくいかないことだらけで嫌になって、自暴自棄になりダラダラ過ごしテキトーに考え無為に行動する。一昔前、育毛剤のCMで「戦わなきゃ、現実と」なんてコピーがありましたが、どちらかというとよく観察するべきはイデアではなく現実ですよね。

プラトンの考えは、それ自体は面白いし勉強にもなりました。でも、よりよい状態を目指すということに主眼を置くと、あまり現実的な対応策とは言えません。やはり現実と向き合う必要がある、そんな結論に、当たり前のように行き着いたのが弟子にあたるアリストテレスです。

忖度をして、師匠であるプラトンの説をそのまま流用しなかったところにアリストテレスのすごさはあるのでしょう。見事にその知を引き継いでさらに発展させた功績者です。ということで、間違っているかもしれないけどきちんと自分の考えを持っていることは大切なんだと私はプラトンから学びました。あとは後世の人々がそれにケチを付けながらさらなる理論を作り上げていくでしょう。

ケチをつける材料を後輩に与えるだけでも偉大なのです。

プラトンとセットで覚えたいキーワード

ここからは倫理の試験に出るようなキーワードの羅列になります。プラトンという言葉と一緒に覚えておいてください。

キーワードでプラトン哲学を理解する

・イデア:物事の本来の形、あるべき姿

・イデア界:すべてがイデアによって作られている世界、天上界

・現像:イデア界に対応する語。我々が済む現実の世界

※先ほど理想という言葉をつかって解説してきましたが、「本来の姿」がイデアであると言ったほうがプラトンの言葉に近いのです。が、私は「理想像」と解釈しています。だって、対象が丸とか四角の時は「本質=イデア」だったのに、対象が人間や国家になると急に「理想像=イデア」になるのだから。プラトンの説の最大のツッコミどころはこの部分です。

・善のイデア:人間のイデア あるべき理想の人間像

・エロス:善のイデアを追求する熱い思い

人間なのだから理性的に善を追求しましょうという部分です。これには後世の学者がいろいろツッコンでいます。大前提として「人間=理性が間違い」だという意見や、仮に理性的であったとしてもそれを悪に使う人も存在する。いろいろな矛盾はありますが、あくまで理想としての話です。

・魂の三分説:理性と気概と欲望。理性が上位で気概と欲望をうまくコントロールする。

・四元徳:正義、思慮、節制、勇気。善のイデアに求められるもの

理想的な人間に求められる条件を掲げたものです。これらを兼ね備えた哲人が国家を統治すれば素晴らしいよね、という考えに基づいて作られた言葉たちです。

まとめ:プラトンの一生

裕福な家庭に生まれ、知性にも体格にも恵まれたリア充です、一言で言えば。

ソクラテスの門下生になって弁論や哲学をおもに学び、旅行やほかの学者からの学びなど多くの経験を積んでアカデメイアという自分の学校を創設します。晩年は自分の理想とする政治の実現を試みたりもしますが、うまくいきませんでした。80歳でこの世を去ります。

さて、プラトンは理想に燃えた人だったことはここまでの解説でお分かりいただけた思います。でもただ理想に突っ走ったわけではなくて、当然現実もちゃんと見ていました。それが学園の創設と後進の育成でしょう。

プラトンの理想は無駄なものではなく、私たちもきっちり受けつがなくてはいけません。

哲人を目指してもいいし、反面教師としてイデアを捨てて現実としっかり向き合い生きていくのもよい。いずれにしても、限られた生を有効に使いたいものです。

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