アリストテレスの「第二哲学」は諸学の起源だったのかも

古代ギリシアの哲学者、アリストテレス。ソクラテスの弟子のプラトンの弟子でとても優秀でした。

アカデメイアというプラントが始めた学校の生徒で17歳から20年間、プラトンの優秀な弟子のひとりとして学問にはげみました。アリストテレスの功績は多岐にわたります。すべてを紹介することはできないので、最も大きな功績と言える「学問の始祖」としての側面をご紹介します。

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アリストテレスの第二哲学とは?

なんだよ、いきなり第二かよ。

第一はどこに行ったんだ!と思うかもしれません。ですが、この第二哲学と呼ばれているものこそ、アリストテレスが創ったものの中で最も偉大なモノですので、こちらから話を進めていきます。

アリストテレスが生きたのは、今から2400年ほど前の古代ギリシアという場所です。今とは違い学問も科学技術も未発達な、まだまだ未熟な社会でした。

二人の偉大な先輩、ソクラテスとプラトン、さらにその前の時代にも哲学者と呼ばれる人たちはいましたが、基本的に会話によって問答をし、あーだこーだ言うスタイルの、いわばなぞかけ問答スタイルのやり取りによって行う知的遊戯が、アリストテレス以前の哲学でした。

奴隷が肉体を酷使し必死に働いているその時に、神殿の柱に寄りかかったり、大階段に腰掛けたりしながら、暇人があーでもないこーでもないとしゃべるのが哲学だったのです。

ソクラテスの無知の知(ただのタチのわるい変なおじさん)、師匠のプラトンのイデア論はともに実体のないもので、頭の中で考え、しゃべるだけのことでした。実体のないものを語ることも当然大事なことではあります。

例えば、当時から現代までみんなが一度は考える問いに「人生とは?」「生きるとは?」「幸福とは?」もう少し踏み込むと「国家とは?」「権力とは?」なんてものもありますが、そんな答えのないものをあーだこーだいうスタイルだったのです。

そんな状況下でアリストテレスが提案したことは、実体のあるものに関しては素直にそれを観察しませんか?というシンプルなことでした。そして似た特徴があるものはグループとして分類しトコトン研究しましょ、と唱えました。

これが今の学問というわけです。現代人の我々からすれば、専門領域が分かれていたり、学生なら教科が分かれているのは当然なのですが、アリストテレス以前は学問=哲学=言葉遊びだったのです。

アリストテレスは、現代にいたる様々な学問の創始者であるといっても過言ではありません。弁論、動物、植物、天候、物理、天体などを学問としてはじめて作ったのはアリストテレスです。のちにこの第二哲学は自然科学と呼ばれて大いに発展していくことになります。

学校で学んだ経験がある我々は、多かれ少なかれ、2400年前の一人の哲学者の影響を受けていると考えると、ちょっとだけ勉強をする気になりませんか?

では第一哲学とは何なのでしょうか?

第一哲学は、先ほど述べたあーだこーだの部分になります。目に見えない概念、触ったり観察することができない様々なモノについての思索です。

これを形而上学と呼びます。

代表的なものとして「宇宙についてのあーだこーだ」「神についてのあーだこーだ」「人生についてのあーだこーだ」があります。いくら論をこねくり回しても答えが見つかりっこない一見無駄に思われるこれらの議論ですが、そこから新たな学問領域が見つかることもあるので決して侮ってはいけません。でもやはり、年代を下るにつれ、役に立たないものの代名詞としての地位を確立し現在に至ります。(笑)

なので、形而上学とは何かと問われたら、答えのないことをあーだこーだ考えてみること、と言っても大丈夫です。(テストには書かないでください)

形而上学は原語ではメタフィジカと言います。「メタ」は「超えた」とか「後の」とかいう意味で「フィジカ」は自然学を意味するので、そのまま直訳しても意味としてはOKですね。自然を超えたものについて語る学問、それが形而上学ということになります。

【まとめ】アリストテレスの名前と一緒に覚えたいキーワード

哲学を哲学史として学ぶ際には、人名+キーワードで覚えるのが一般的ですので、念のためアリストテレスと関連するキーワードを羅列しておきます。

ヒュレーとエイドスの概念

ヒュレー(質料):素材・材料となるもの。(例、コップを作る際のガラス)

エイドス(形相):ヒュレーを形にするための設計図でありデザイン。(形としてのコップ)

このヒュレーとエイドスはセットで覚えましょう。ITやプログラミング界隈の人は哲学も好きだったりするので、さりげなーくこの言葉を入れてみてください。先方はニヤッとするはずです。

使用例:「この案件で、クライアントが求めるエイドスってどんな感じっすかね」

デュミーナスとエネルゲイアの関係

・デュナーミス(可能態):ほかのものに変化できる状態のもの

・エネルゲイア(現実態):デュナーミスが変化して現実になった完成形

ここに一枚の板があるとします。この板はデュナーミスです。4つの脚を取り付けるとエネルゲイアであるテーブルになります。しかしここで話は終わりません。

テーブルの脚を取り外して玄関に取り付けたらそれはドアにもなります。テーブルはエネルゲイアであると同時にデュナーミスなのです。この世のほとんどのものは何かに変化し、一度完成してもそれはまた何かに変化する可能性がある、という考え方ですね。

先ほど紹介したエイドスは、デュナーミスをエネルゲイアにするための設計図というとらえ方でOKです。

使用例:「新人諸君、君たちはエネルゲイアであると同時にデュナーミスである。そして思わぬところにエイドスは転がっている!」

最後にアリストテレスの人生を振り返る

師のプラトンが亡くなるまでアカデメイアで勉強を続けますが、その後、当時13歳のアレクサンドロス(のちの大王)の教育係になります。師弟関係は長く続いたようで先生としても優秀であったことがうかがえます。

アレクサンドロスが無事に王に即位したのを見届けたアリストテレスは、アテナイに戻ってリュケイオンという学校を創設します。プラトンが創建したアカデメイアとともに、アテナイの二大名門学校となったわけです。

そこで長らく教えていたのですが政情不安からアテナイを去って、晩年は郊外の島で生活をし、62歳で亡くなったとのことです。

哲学を意味する「フィロソフィ」という言葉の生みの親でもあるアリストテレスは、そんな感じの一生を送ったのでした。

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