【小説「鮎師」夢枕獏著】狂気?執念?釣りのためにそこまでするの?

2021/09/05

雑記 釣り文学

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なんだか脚に力が入らないので

釣りに出かける元気がありません。

そんな時は、釣りの本でも読んで気を紛らわせるしかないですね。

今回ご紹介する本は「鮎師」夢枕獏著です。


夢枕獏著「鮎師」のあらすじ


主人公である菊村は家庭にも仕事にも満足している、ごく普通の鮎釣りが趣味の男

ある日ホームリバーである早川で鮎釣りをしていると、川の中深くまで入り箱眼鏡で水中をしきりに眺めている異様な男、黒淵を目撃します。

黒淵が探していたものは岩の苔に残った巨鮎の喰み跡だった。

登場人物たちは鮎釣りと日常とを分かつ「一線」を行き来する。

一線を越えた先にあるものは狂気なのか、執念なのか、現実社会からの逃避なんだろうか?

巨鮎との遭遇は菊村にどんな変化をもたらすのだろうか。

結末は実際に読んでみてください


印象的なシーンと言葉

テンカラ毛ばりと鮎釣りの毛ばり

この小説の序盤で、テンカラが登場します。

主人公の菊村は釣り仲間の小島と渓流の山女魚釣りに出かけます。そこで鮎のちんちん釣りに使う3つの毛ばりが付いている仕掛けを試してみるシーンがあります。

3つの毛ばりは、お染、青ライオン、暗烏(ヤミガラス)。その一番下の暗烏に尺にわずかに足りない山女魚が食いつきます。

テンカラをやっている身としては、毛ばりならある程度どんなものでも魚は食いついてくるという、雑なとらえ方をしているのですが、二千種あると言われている鮎の毛ばりの世界では、この季節、この時間、この状況ならこの毛ばり、というものがあるようです。

自分のテンカラが実に適当でおおざっぱなのか、ちょっと考え込んでしまいました。

この小説を読むと、確実に、毛ばりを巻きたくなります。


川の底力を見せつけられる

川底をブルトーザーでさらう河川改修工事によって、多様なポイントを形作っていた早川が単調な水路のようになってしまうシーンがあります。

でも台風による大雨で一夜にして川はかつての複雑な流れを取り戻し、また新しいポイントが生まれます。

人が自然に対して手を入れられることはほんの微々たることで、川が本気を出せばあっという間に好きなように形を変えられる、そういうことが非常にわかりやすく納得のいく形で描かれています。

川が荒れ狂うことを願う黒淵の気持ちも、わからなくはないです。


まとめ:とりあえず今夜は毛ばりを巻きます

狂気と日常を隔てるものは何なのでしょうか?

黒淵の狂気が少しずつ菊村に伝染していくさまが、なんとも怖いようであり、釣りを愛するものとしてはよく理解できる感情です。釣り人なら誰しもが、人生で一度は、終盤の菊村のような状況に陥った経験があるのではないのでしょうか?

私もスケールは違いますが、2週間毎日同じポイントに通った経験があります。

そして面白いのは、説得力を持つのはうわさ話や伝え聞いた話ではなく、あくまで実体験であるということ。

他人が釣った大きい鮎を目にした中島は、何かに吹っ切れ、鮎釣りをやめてしまいます。


その実体験が、影や痕跡であっても構わないけど、自分の目で見ていないとやはりリアルではなく、心を動かすには至りません。

川底に揺らめく巨大な影は、簡単に人を狂わせてしまいます。


さて、釣りに行きたくなったので、今週は自転車漕いでどこかに行ってきます。

まずは今晩、新しい毛ばりを巻いてみます

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