3回に分けてルソーの足跡をたどってきました。
当時の市民としては極めて移動の多い人生でした。
考え方を変えるのには、環境を変えるのが手っ取り早い。
それを地で行ったのが、ルソーです。
今回はまとめのまとめということで、改めてルソーと旅について検証していきます。
移動すること、ひたすら歩くこと、考えること
ということで、前3回でルソーの生涯を旅という側面からかなりざっくりとですが見てきました。
ルソーが生きた時代、移動手段は馬車か徒歩になります。
ルソーは徒歩での旅行を好んでおこないました。
考えに行き詰まったり、気分が落ち込んだり、そして気分が高揚しているときにも積極的に歩きました。
以下、「告白録」からの引用です。
一人でした徒歩旅行のときほど、多くを考え、多く存在し、多く生き、あえて言うならば、多く私だったことはない。歩くということには、なにか思想を活気づけ、活発にするものがある。ひとところにじっとしているとき、私はほとんど考えることができない。私の精神を働かせるためには、肉体に動きを与えなければならないのだ。田園の光景、心地よい景色の連続、大気、旺盛な食欲、歩くことによって得られる健康、田舎の宿の自由さ、束縛を感じさせ今の境遇を思い出させるすべてのものから離れること、そうしたことすべてが私の魂を開放し、ずっと大胆に考える力を与え、いわばさまざまな存在のかぎりない広がりのなかに私を投げ入れて、なんの遠慮も心配もなく思いどおりにそれらの存在を組み合わせ、選び、自分のものにさせてくれるのである。私は自然全体を自由に処理する。私の心は物から物へとさまよって、気にいったものに結びつき、同化し、魅力的な映像に取り囲まれて、快い感情に酔いしれる。『告白録』第4巻 松本真一郎訳
徒歩、現在ではウォーキングと呼ばれますが、その心身に与える作用について、ルソーはいち早く気が付いていたようですね。
現在では研究によって歩くことの健康効果と脳に与える刺激は明らかにされていますが、それを身をもって体験し文章に残しているところはとても興味深いですね。
「多く私であるため」に常に動いていなくてはいけない。
これは一日のなかでもそうであるし、人生においてもそうである、とルソーは感じていました。
起こる出来事、湧き上がる衝動にその身をまかせ、存在を探し続けてたえまなくさまようことこそが、ルソーの存在そのものであったということができます。
私がルソーの生涯を振り返ってみて学んだこと4つ
・自分の完成形は存在しないと気が付くこと(きょう一日が唯一の自分の人生)
・成長のためには環境を変え続ける必要があること
・すぐに移動できる状態、すなわち所有物を減らして身軽でいること
・徒歩は心身に多くの良い影響を与えてくれる
あなたは彼の生涯から何を学びますか?
ぜひ著作や先行研究にも目を通してくださいね。
今後、エミールと社会契約論の記事も書いていく予定です。
※一連の記事は以下の著作を参考に書きました。
「告白(上・中・下)」岩波文庫
「ルソーを学ぶ人のために」世界思想社
「人と思想 14 ルソー」清水書院
0 件のコメント:
コメントを投稿